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オーディオの遍歴
第17章 ゲシュタルト崩壊の新デジタル・フォーマット
(第三世代デジタル・オーディオ・システム到着)

第16音楽よ、届け!

オーディオの遍歴16 音楽よ、届け!の続きです

2003/09/11,28
2005/01/01
実は7月にほぼ書き終えていたので、
文中には7月時点の記述があります

■ゲシュタルト崩壊とは

統一性/全体性が失われることをいいます。
ゲシュタルト心理学用語です。
そして、現代文明がもつ、病的な側面を一言で説明する、とても便利な用語でもあります。

01 マルチアンプが出来ないなんて、片手落ちさ・・・

私のオーディオ・システムが、フル・デジタル・システムに完全に移行したのは、1999年5月でした。もう、4年以上も前のことでした。

このときに、その音の質に感心しながらも、はじめからこのシステムの機能について、問題を感じていたことがありました。
それは、使用していたデジタルパワーアンプであるTacT Milleniumがマルチアンプ駆動する機能を持たないという、根本的な機能の不足のことです。
私達がオーディオで使用するアンプとは、通常はステレオアンプで、1台で左右のスピーカーを鳴らす方式を取ります。
ステレオアンプとは、右チャンネル、左チャンネル用の2台のアンプが1台の機械に入っているアンプのことです。1台の機械に1台のアンプが入っている機械は、モノラルアンプといいます。

ここではステレオを前提に説明しますが、AVシステムで5.1チャンネルとか6.1チャンネルであっても、これから説明する話題は基本的に意味は一緒です。

ステレオアンプのように、1台に2つのアンプが内蔵されていると、左右のスピーカーの駆動が行われる中で、1台の機械の中で相互に影響しあうことは、原理的に避けがたい点があります。理想的な電源回路、つまり負荷の変動に影響されない電源回路を作ることが不可能だからです。電源回路にとっての負荷とは、アンプのことで、どのようなタイプのアンプであっても瞬間的には負荷は変動します。
このようなアンプの動作の変化は、電源回路を経由して、もう一方のアンプにも強い影響を与えます。ですから、当然ですが、このような影響が2つのアンプ間で極力発生しないように、ステレオのハイエンド・オーディオ機器に内蔵されている電源回路には、強力な対策が行われています。

アンプというものは、設計時の前提とて、電源電圧が変動しないという前提で設計されています。もしもアンプが電圧ではなく電流を前提に信号を伝えていたら・・・そうした変動にはとても強くなります。また、機器を結んでいるインターコネクト・ケーブルの影響も受けにくくなります。そうした方式のアンプは、複数のメーカーから出ていますが、最新技術なので、そう多くはありません。

例えば、下図に示している、私が以前に使用していた、1994年に開発されたKRELL KSA-100Sは、極めて強力な電源回路を搭載しています。この機種は、1オーム負荷でピーク時において片チャンネル当たり1600Wの出力を可能とする極めて強力なアンプが2台と、それを支える電源回路を搭載しています。
このアンプは、サステインド・プレイト・バイアス・テクノロジーと呼ばれる技術を採用したAクラスアンプで、入力信号を分析しながら、Aクラスの動作を動的に切り替えるアンプです。入力信号が大きくなると、それに対応してAクラスが大出力に耐えられるように切り替えられます。この動作を実現するために、アンプの入力信号を分析する高速の制御回路が内蔵されており、アンプの入力信号が出力段に到達する前に切り替えが行われるようになっています。そして、この切り替えは、一旦大きくなると、信号が小さくなっても、一定時間維持されます。

通常のステレオ・アンプ駆動
1台のパワーアンプでスピーカーを1セット鳴らします
KRELL KSA100S内部のベリリウム銅製バスバー。この電源回路は、ピーク電流で60aの供給を可能にしています。こういう電源を搭載したアンプは、いわば溶接機みたいなモンです。

このような徹底している構造になっていても、1台のアンプで左右のスピーカーを同時に駆動したときに、その影響は、慣れている人であれば、聴感上で容易に理解することが出来ます。これは、経験のある人であるとわかる違いで、再生音の大きさはそれほど関係ありません。音色に、その影響は現れてきます。

経験が無い人でも、以下に述べるマルチアンプ駆動と、通常の1台のアンプでの駆動を比較すれば、誰にでもわかります。非常に明確な違いがあります。

そして、この問題の解決策は単純です。電源回路を全く別に持つ、複数台のアンプで、別々にスピーカーを駆動すればいいのです。これにより、そうした影響を大きく下げることが出来ます。これが、マルチアンプ駆動です。
このような背景から、オーディオを長くしていると、マルチアンプ駆動は、ひとつの定石のようなものとなっていきます。
かるばどすほふでご紹介している、いろいろな方のリスニングルーム(詳しくはリスニングルーム探訪をご覧ください)でも、マルチアンプ駆動はよく行われています。かるばどすほふの写真から、ちょっとご紹介しようと思います。これらの写真は撮影時期の関係で、古いものが多いのはご容赦くださいませ・・・。きっと、今はもっと違うシステムを使われていると思います。

KRELL MD300、2台でマーチンローガンのCLS2を駆動していました UESUGI4台でTANNOYを駆動していました Klimax Twin2台でSignature Series AE2を駆動していました。
撮影1998/7/11
撮影1998/7/19
撮影2002/5/22

先輩のお宅では、Linnの最高級パワーアンプである、Klimax Twinというステレオアンプが2台使用されていますが、使用しているスピーカーは比較的小型なSignature Series AE2です。普通ですと、1台のKlimax Twinでいいのでは思われのではないでしょうか。先輩は、「マルチアンプか、そうでないかは、もうまったく違う」と仰っていました。はじめは、Klimax Twinを1台で利用したかったそうですが(コストを考えてください、当然のことです)、その違いのために、マルチアンプにせざる得なかったのだそうです。
これほどにマルチアンプ駆動にはその結果に違いが出てきます。
小型のスピーカーはそれほど強力なパワーアンプでなくてもいいという誤解があります。しかし、現代のスピーカーは低能率、広帯域です。ですから、アンプの出力は大きくないと、スピーカーを駆動し切れません。そして、そうした現代のスピーカーは、アンプの性能や状態を、そのままに再生します。ですから、アンプの実力は重要です。先輩のお宅の場合、それほど大音量で楽しまれている訳ではないのですが、それでも、1台で駆動する場合と全く異なるクオリティであったのでした。
マルチアンプであるか否かの音の違いはとても大きく、再生音が大きい場合のみの問題ではありません。再生音量は、それほど大きくは影響しません。これは、体験するとよくわかることなのですが、想像することはちょっと難しいみたいです。率直なところ、その違いを知らない人も、少なくありません。
かく言う私も、フルデジタルシステムに移行する前は、マルチアンプ駆動で利用していました。
ステレオアンプ2台を使用して、左右のスピーカーに対応させて使用していました。それぞれは、1台のステレオアンプにより、高域側と低域側を別々に駆動していました。このような方式を、バーチカル・マルチアンプ方式といいます。このような、方式の話題の詳しくは後ほどに・・・。

旧システム左側
KRELL KSA100Sがスピーカーと背中合わせに配置してあります。スピーカーケーブル長は20cmでした。
旧システム全景
昔はこんな感じでした。

旧システム右側
使用しているケーブルはKimber KCAGでも特注で、モノラル信号が左右に振り分けできるようになっています。

私がこのようなKRELL時代のシステム構成を取りやめて、今日のTacT Millenium Mark?U1台体制に移行したのは、その方が音的なメリットが大きいためだったからです。ここには、アンプの能力という話題が別に存在します。
なにしろ、デジタルアンプは構成がシンプルなのです。プリアンプや多くの接続ケーブルを使用しないのですみます。つまり、そうした不確定な要素が、どっと少なくなります。そのメリットは計り知れません。

もっとも、完全になくなると、音が気に入らないときに、とうしたらよいのか、わからなくなりますよね

しかし、それでも不満に思うことがありました。それは、マルチアンプ駆動が出来ないという、当時の製品仕様そのものにありました。もしもマルチアンプ駆動できれば、より楽しめることは明らかだったからです。
オーディオで採用されているデジタル信号の伝達は、ケーブル1本で行います。そのため、デジタル信号を直接に取り扱うために開発されたTacTが採用しているEquibitテクノロジーにより実現されたデジタル・アンプは、1台でステレオをそのまま取り扱えます。当然のことです。
しかし、なぜか、運用の選択肢として、モノラル駆動するための機能を持っていなかったのでした。当時の私には、理由がわからないほど不思議な点でした。なぜならば、最後にスピーカーを駆動する回路は、結局はアナログ的な動作であり、電源による影響は避けられません。ですから、マルチアンプにすることによるメリットは、想像に難くない話題でした。そして、開発者にとっても、そうした機能を加えることは簡単なはずでした。
こうした背景があったため、はじめから機能として欲しいとリクエストしたのが、マルチアンプ駆動運用の機能の実装でした。

もっとも、お店経由でリクエストしていたので、TacTに伝わっているのか知りませんけど・・・

やがて、TacT Millenium Mark IIの音も大体発揮させることが出来るようになり(鳴らし込みにはノウハウを得るために、時間がかかります。その辺の詳しい話題は、?K 音の実存を求めてをご覧ください)、だんだんと、このアンプの音も詳しく音を聴き別けられるようになりました。そして、音の中に、左右の音の影響を感じていました。音のエッジが立ち切らない感覚があるのです。そして、いろいろと対策しても、その感覚を拭うことが難しかったのです。
詰まるところ、最後の理由として、マルチアンプでないことによる干渉であることは、明確な気がしていました。

当時導入を検討していた
MeridiAn-861Reference Surround Processor
結局全体コストが気になり試聴もしませんでした

そうした背景があり、一時期は、左右にデジタル信号を振り分けることが出来るデジタルプリアンプの購入も検討しました。
当時、世界でメリディアンだけがそうした機種を提供していました。
もちろん自分で作ることも出来ますが、オーディオ機器とは、動作すればいいというものではありません。音の質を高めるための努力が必要で、結局は作るために多大な時間を必要とします。趣味で作っていては、時間がかかり過ぎ、作っているうちに時代が変わってしまうのは明白ですから、よく検討された製品を買うという選択肢が大切であったわけです。
といいながらも、Millenium Mark IIをもう一台増設して、しかもメリディアンのデジタルプリアンプ・・・コスト的に大きすぎる気がしました。また、メリディアンの製品はアメリカでは高い評価を受けていましたが、私自身は、あまり利用したことがないメーカーでもあるので、ふんぎれなかったのでした。
そして、思いました・・・

「いいや、TacTの努力を待つか・・」

02 マルチアンプあれこれ

マルチアンプには、複数の方法があります。
理想的なマルチアンプは、ちょっとハードルが高い
一番理想的なドライブの方法は、スピーカーユニット単位、または、ユニット群単位に別々にドライブする方式です。

この図は、LinnのKomriリファレンス・モニタースピーカーを、LinnのKlimax SOLOというモノラル・アンプでドライブする場合の、比較的理想的な使い方のパターンを示したものです。Komriは4系列のスピーカー群を内蔵しています。ですから、パワーアンプは4系列が理想となります。Komriには1400Wのパワーアンプが片チャンネル当たり2セットづつ内蔵されていますが、そのドライブはパワーアンプにより行います。ですから、ドライブするアンプは同タイプに統一するに越した事はありません。

BMW X5 4.6IS
この車って、BMW X5でも高い評価があるみたいですが、お値段もちょっと張るみたいですね。この車2台弱の費用で、上記の構成を実現できます・・・(^^;

と、気楽に書きましたが、このような構成にすると、アンプだけで、BMW X5 4.6ISとお値段は同じくらいになってしまいます。スピーカーの値段やそれに各種のケーブルを加えると・・・この車だけで二台買えちゃうかもしれません。
Linnのスタジオなんかは、ひょっとするとこうした凄い構成なのかも知れませんが、あんまり家庭ではやりたくない構成です。この訳は、コスト的にもその理由がありますが、環境的にも大変です。なぜならば、家の電源回路だけでも、相当な容量を準備する必要があるからです。理想的には、10回路(Komiriも電源が必要ですので・・・)、200A程度の準備が出来るといいですね・・・しかし、それでは一般家庭が引き込める容量では、とても足りません。しかし、ここをちゃんとやらなければ、アンプとスピーカーに、このコストをかけてももったいないでしょう。といいながらも、まじめにすれば、こうなると、車二台どころか、家一軒分くらいのコストが必要になります。マルチアンプとは、まじめにすれば、まじめにするほど大変です。
こうした背景があり、実際のマルチアンプは、コストとの相談で構成を考えます。
実際に、いろいろな製品を見てみると、パワーアンプはステレオ用の製品が少なくありません。
私達が利用するものでは、1台に2つのアンプが入っているもの、つまりステレオアンプが、多くなっています。ですから、2台がパックになっているそうしたステレオアンプを利用して、マルチアンプをすると、比較的安価になります。この場合は、アンプ間の影響は、同一の機械内では、当然ありますが、やはり、1台で利用するよりはずっといい結果を得られます。
ステレオアンプによるマルチアンプには2種類のやり方があります。ホリゾンタル(水平)・マルチアンプ方式と、バーチカル(垂直)・マルチアンプ方式です。
ホリゾンタル・マルチアンプ方式
この方式は、スピーカーのタイプに応じて、アンプの種類を変えたい場合などに行う方式で、1台のステレオアンプは左右のスピーカーを駆動し、帯域別にアンプが別れるようになります。
通常は、アンプの性能や音色が異なるものを組み合わせる際に、この方式を採用します。実際には、同一の機種であっても製品のばらつきにより、音色が異なる場合がありますので、そうした際には、やはりこの方式を採用します。

あまり知られていませんが同一機種であっても音色のばらつきは避けられない点があります。一般的に、ハイエンド・オーディオ機器メーカーには、リファレンス機が社内で用意されており、製造時や修理時にそのリファレンス機との音色比較をして、最終チェックを行ってから出荷します。ただし、修理の場合は、このような徹底したサービスを行えることは、メーカーのある国内に限られているようです。

オーディオを長く続けていると、アンプがだんだんと増えてくるので、ホリゾンタル・マルチアンプ方式にして、機器を生かす方もいらっしゃいます。
また、帯域別に、好みの音のアンプを組み合わせることが出来るので、積極的に音質を変えたい方には、楽しいやり方です。問題点は、その長所そのままで、音のつながりを取ることが難しく、音のバランスを実現するためには、かなりの経験と時間、そして工夫が必要です。
昔は、当時に流行っていたjblのように、内蔵されているネットワークがヘボなスピーカーもあったので、内蔵ネットワークを使用しないためにマルチアンプ駆動を選択した時代もあります。その際には、よく採用されたマルチアンプ方式でもあります。
バーチカル・マルチアンプ方式
この方式は、左右のチャンネルを別けてステレオアンプで駆動します。
この方式を行う為には、左右で同一の性能と音色のアンプを使用する必要があります。ハイエンドといわれるオーディオ機器であっても、機種が同一でも音色が異なってしまっている場合もあり、そうした際はこの方式は採用しにくくなります。
余談ですが、かるばどすほふの他のコンテンツでも何回か触れていますが、電源によるアンプの音の支配はとても強いものがあります。この方式を採用している場合に、同一の電源回路につながるコンセントから2台のアンプの電源を取ると、その回路を経由した干渉があるのですが、その影響よりも、コンセントの電源回路そのものが持つ音色のほうが強い影響があることが少なくありません。つまり、別な電源回路を左右に使用したほうが、左右の音色差になってしまい、それがひどい結果をもたらすことがあります。そうした場合は、左右であっても同一の電源回路を使用したほうがいい結果を得られます。理屈よりも、耳に頼る必要がある点です。同一の電源回路を使用しても、しっかりしたアンプであれば、マルチアンプにした方が、ずっといい結果を得られるものです。
この方式は、左右の音の干渉が最も排除できるので、音の鮮度がとても高くなります。また、アンプの音のつながりが自然なので、安定した再生が出来ます。
反面、全帯域にわたって水準の高いアンプを使用しないといけません。ですから、コストは比較的多く必要になります。
スピーカーの要件とパッシブ/アクティブ・クロスオーバー
ところで、このようなマルチアンプを行う際に必要なもうひとつのキーワードとして、スピーカーが対応できる必要があります。昔のようにホーン型スピーカーのようなタイプが全盛だった頃は、もともとパラバラのスピーカーに近いので簡単でしたが、現代のように緻密に設計されているスピーカーが主流となると、スピーカー自身がマルチアンプ(やマルチワイヤリング)による利用も前提に設計されていることが重要です。


Linn Katanのバックパネル拡大写真

Katanは、バックパネルの基盤が組み合わせで回路を構成するようになっており、シングル・ワイヤー接続、マルチ・ワイヤー接続、アクティブ接続(内部のネットワークがバイパスされる接続方式)が選択できるようになっています。
このスピーカーの音質は、かなりいけます。この価格帯では最高水準のものですね。

Linn Katan

幸いに、現代に開発されているスピーカーは、小型スピーカーであってもマルチアンプ駆動(やバイワイヤリング)に合わせた設計が行われています。
たとえば、LinnのKatanは、小型のスピーカーでありながら、バックパネルのスピーカー端子の基盤の組み合わせで回路を構成して、様々なアンプとの接続方法に応じて対応できます。
このような設計が行われているのは、このスピーカーが、形だけではなく、そうした内容を持っていることにも背景があるのでしょう。この価格帯で、もっともいいスピーカーのひとつではないかと思います。

Katanはウーファーが小型なので、至近距離で使用する場合でないときは、スーパーウーファーを組み合わせることがコツですね。位相制御回路を内蔵したタイプがお勧めです。

Katanには、アクティブ接続といわれる、内部にあるスピーカー用ネットワークを使用しないモードが用意されています。
スピーカーユニット毎に信号を振り分けるネットワークを、クロスオーバー・ネットワークといいます。スピーカーに内蔵するものを、パッシブ・クロスオーバー・ネットワーク、アンプ側で行うものを、アクティブ・クロスオーバー・ネットワークといいます。
アクティブ・クロスオーバー・ネットワーク方式の接続は、アンプ側にスピーカー帯域に対応したネットワークを用意し、スピーカー側のネットワークを使用しません。これは、ひとつの理想的な接続方式といわれていました。
もっとも、最新のスピーカーに組み込まれているパッシブ・クロスオーバー・ネットワークは、スピーカーの特性を補償する機能を持っていたりしますので、レベルの高いネットワークを内蔵しているハイエンド・スピーカーでは、パッシブ・クロスオーバー・ネットワークを意図的に外せないように作られているものもあります。また、そうした背景から、機種によっては、バイ・ワイヤリングも出来ないように設計されています。現代のスピーカーは1つのシステムですので、設計方針によりいろいろとあるわけです。

■マルチワイヤリング
低音用と中高音用に別々なネットワークが用意されているスピーカーがあります。アンプとの接続に使用するスピーカーケーブルは、低音用と中高音用に別々に使用します。そのためバイ・ワイヤリングといいます。さらに、中高音用が、中音用と高音用に別れれば、トライ・ワイヤリング、さらに超高音用が加わると、クワッド・ワイヤリングといいます。ついでに、1本だけのケーブルの場合は、シングル・ワイヤリングといいます。

03 TacT M2150/S2150との出会い

ほー、この機械、ついにマルチアンプ対応になったんだ
2003年3月でした。秋葉原近くに行く用があり、お店にちょっと寄ってみました。

TacT M2150
TacT S2150

その際に、見かけたのが、TacTの新型デジタルアンプである、M2150でした。
実は、この機種は数年前から情報は出ていたのですが、流通するようになったのは比較的最近です。このメーカーは、結構のんびりしていて、なかなか製品が出てこないという特長があります。
「Digital Integrated Amplifier」として発表されていました。ですから、私の使用しているMilleniumの廉価版として理解していました。はじめはM2150しか発表されていませんでしたが、その後にS2150が発表されました。なにが違うのか、よく知らないでいました。
しかし、お店でカタログを見てみると、全く異なるものでした。M2150はマスターとなり、デイジーチェイン接続で、S2150を複数台接続することが出来ます。そして、マルチアンプも実現できます。そう、待望のマルチアンプ駆動が可能なのでした。

「いいねー、これ。ちょっと聴いてみたいなー」
「わかりました、今度お持ちします」

という展開になりました。
試聴機到着
2003年3月25日、試聴用M2150とS2150が、私の家に着きました。
お店で話をしてから、ちょっと時間が経っていました。お店にあったM2150に不具合が見つかり、輸入代理店に戻していたため、かわりのもう一台を取り寄せるのに時間がかかったのだそうです。

テスト中のM2150/S2150
手前にあるのは、Kimber Digital Cable群
実は、いろいろと持っています
設置完了

M2150/S2150によるマルチアンプ駆動は、お店の人も私も初めてなので、まず床置きにしてテストしました。
TacTらしい親切なドキュメントのおかげで、設置は大変でした。
マルチアンプ駆動の際に必須な、アンプの連係動作をさせる設定が、あんまりわからなかったのです。この指定は、M2150の制御メニューにあるのでしたが、ドキュメントにその指定の意味が書いてないのでした・・・たった1行、それだけではマルチアンプ時に使用するという意味の伝わらない用語の指定が書いてあるだけなのでした・・・あはは。

JSP KAPTOVATOR
テスト時に試聴しているK店長。私はどうせゆっくり聴けるので、こうした機会にはよく聴いてもらうことにしています。

設置の際に、M2150とS2150のデイジーチェーン接続にはRCAプラグのデジタルケーブルしか使用できないことがわかり、KIMBER AGDLを使用しました。ちょうど、昔のDAコンバーターを使用していた際に、1AMのタイプを数本持っていたので、助かりました。
問題は、電源ケーブルでした。私が使用しているJSP KAPTOVATORは、2本しかありません。最低限、CDプレーヤーとデジタル・パワーアンプには、KAPTOVATORを使用したいので、3本必要です。
とはいうものの、今回の目的は機械の可能性を聴くためです。ま、いっか・・・ということになりました。
ちょっと聴いてみると、なかなか可能性のある音です。Milleniumよりも、ウォームトーンの傾向がなくなっており、なかなか正しい音がします。

「ふーん、Milleniumと違って、ウォームトーンじゃないんだね」
「かるばどすさんのところだと、Milleniumがウォームトーンということがわかるんですけど、環境によってはそうした音にならないんですよね」
「そりゃ、電源の音が出ちゃってるんだろうね。ちゃんとした電源対策しないと、そのまま音に出るからね、デジタル・パワーアンプは・・・」
「電源の影響が出にくいってことになっているんですけど、やっぱり出ますよね」
「デジタル製品の音を電源が支配的なのは、他の機器とそう変わらないよね。インターコネクトとか、要素になる製品が少ないから、余計電源には気をつけないといけないし・・・」

接続は、バーチカル・マルチアンプ方式にしました。ただ、左右で全く異なる電源ケーブルを使用していますので、KAPTOVATORの代わりに使用しているWIREWORLD ELECTRA III Reference Power Cordの音が、元気過ぎです。もっとも、そうした音の電源ケーブルですから・・・。あんまりちゃんとしたバーチカル・マルチアンプで鳴らしているわけではありません。

書いたときにはそうでしたが、今では両チャンネルともKAPTOVATORを使用しています。とてもいいですね。

2005/01/01

問題発見・・・(^^;
ちょっと使っていて、リモコンが動作する際の異常を見つけました。ちゃんと動作しないのです。動作したと思ったら、ボリュームがそのまま上がりきってしまったり、下がりきってしまったりします。

「うーん、あ、これ、きっとプラズマディスプレイのせいだね。B&Oも、この問題があった時期があるんだ。ヨーロッパの製品は、この問題あるんだよね、時々」
「えっ、そうなんですか。実は、お店のある機械を代理店に戻したのもこれが原因なんです。故障だと思ってました」
「そーなんだ、でも、これの対策はそんなに難しくないと思うよ」

で、プラズマディスプレイを消したら、OKでした。

「うちのお店でも、富士通のプラズマが設置してある部屋でトラぶってました。しかし、よくご存知ですねー」
「まあねー、こういうのは体験がすべてだもの、B&Oで体験済みだったから・・・でも、代理店には、この問題が解決しないと買うわけには行かないって話といて下さいね」
「わかりました」

ま、輸入品ですからねー。
問題は、実力で突破していただく・・・というのが、もともと技術屋である、かるばどすの発想です。
試聴は続く
で、機械は置いていってもらいました。
オーディオ機器は、電源を投入後、時間と共に再生音が変わります。ですから、時間をかけないと試聴になりません。
機器によっては、電源投入後、1週間くらい経たないと本当の音を出さないものもあります。

昔のKRELLなんかは、そうでした。取扱説明書にも明記されていました。

私のところにあるMillenium Mark IIは、電源を切ることがありませんでした。電源回路の安定度の関係か、電源投入後ある程度の時間を経ないと、音の水準が上がらないからです。デジタル・パワーアンプは消費電力が小さいため、そうした利用方法でも、私も、東京電力も、首都圏も、ぜんぜん困らないのです。ただ、Millenium Mark IIの場合は、大きな音を出しているうちに、すこし音の変化があります。これは、出力段のjensen製のローパスフィルターの温度による変化かなーと考えています。

ところで、私の試聴は、お店ですることはほとんどありません。店頭のシステムで満足いく再生環境が難しいからです。いつもお店にいる店員なら聴きなれているので判断できるでしょうからいざ知らず、時々行く客が店頭の音で判断することは至難です。昔Komriを試聴していたときは、3週間借りていました。後で知ったのですが、当時は人気の機種で評論家の人でも1週間しか借りていなかったそうです。そのことを後から聴いてびっくりしてしまいました。ただ、その際はKomriの良さは認めながらも、導入はしませんでした。ちょっとだけ、Komriのトーンカラーが気になったからです。ただ、最新のKomriはその問題も克服したそうです・・・はてさて・・・どうしよう・・・(^^;

今回も、1週間借りていました。
この間に、かるばどすほふのご愛読者の方が遊びに来られたこともありました。

その話題はこちら

こういうタイミングでいらっしゃると、いいのか悪いのかよくわかりませんね。なにしろ、これから鳴らし込みをするわけですし、自分の経験に照らして判断することしか出来ません。
また、ある水準を超えると、音は、受止めるのために、それなりの経験が必要になります。
そんな背景があり、ある一線の音の水準を超えると、それを受止められるかどうかは、人によって違うものだと思います。世の中、良いの悪いのと単純に二元化できるものでもありません。音も同じですよね。
リンジャパンのS部長は、うまく例え話でこの話題を仰っていました。

「ピカソの絵の価値をわかるのは、それなりな人ですからねー」

うまいこと仰るものです。
後日談
後日、メーカーから緊急修正用ファームウェアが届きました。
このファームウェアにより、プラズマ・ディスプレイと併用してもリモコンは正しく動作するようになりました。このファームは、正式版ではなく、私用に届けられたものです。将来に、必要な機能開発が行われた正式版が届けられる・・・はず・・・です。
TacTでは、アクティブ・クロスオーバーの機能の拡張を行っています。今のバージョンでは、低音がスーパーウーファーくらいの周波数帯をサポートしていますが、この帯域を広げて、通常のウーファーの帯域のサポートが行われる予定です。私宛に届けられた特別修正は、きっとそのバージョンに組み込まれるのでしょう。
私が購入を決めたのは、試聴の数ヵ月後でした。

04 TacTの製品とHDCDの取り扱い

ところで、お知り合いの方からメールを頂いて、TacT M2150/S2150がHDCDをどのように取り扱ってるかについて話題になっていることを知りました。
かるばどすほふでも、HDCDについてはかなり言及しているので、メーカーはあまり公表していない部分ですが、ついでに知っている範囲でご紹介してしまおうと思います。

もうかなり古い製品ですが、世界で始めて開発されたフルデジタル・パワーアンプです。

内部には、当時のHDCDライセンスを保持していたMicrosonicsのHDCDデコードLSIが搭載されています。1994年のチップです。もう、10年近い前ですね。
このLSIは16ビットデータの場合に動作します。ただ、この製品が登場した時代では、CDプレーヤ等のデジタル出力が18ビット以上になっている製品も多くなっており、HDCDデコーダが動作しない場合も少なくなかったようです。

ところで、搭載HDCDデコード処理を使用していないという話もありましたが、資料を見る限りHDCDデコード処理はバイパスできません。ですから、行われていると思います。

また、搭載されているEquibit回路が、モジュール化されているだけのローテクで作られているのが面白い点ですね。

RCS 2.0
この製品も、今ではかなり古い製品です。

この製品の時代になると、さすがに今の時代式になり、AlteraのCPLD(CPU+FPGA+高速メモリ)が採用されています。ですから、もう内部構成は外観から理解できません。
実は、このチップの製造が遅れてしまい、この製品の出荷は、軽く1年近く遅れたのでした・・・(^^;
ところで、HDCDデコーダーはどうなったのでしか・・・
もう、デコーダーLSIは搭載されていません。この時代では、HDCDは半導体販売を戦略にしたテクノロジーではなく、当時の多くのLSIに組み込まれています。DVDなどに使用されているデコーダーの多くにも組み込まれていました。
TacTが開発したアルゴリズムで開発されているこの製品に、組み込まれているといいですね。

個人的には、開発技術者の常識として組み込まれている可能性が高いと思います。デジタル処理の中でスペックダウンというのは、ほとんどの場合で選択されないからからです。また、HDCDの処理は、今の技術では比較的簡単です。

M2150/S2150
最新のM2150/S2150では、最新技術で開発されています。

CPLDやDSPプロセッサも最新のものが使用されており、小さくて写真で目立つこともなくなりました。
DSPには、モトローラXC56l307VF160が2つ使用されています。また、Alteraのチップも組み合わされており、構成部品はもうほとんどありません。
さて、HDCDですが・・・これもソフトでの処理がどうなっているなのかなので、外観からはよくわかりません。
ただ、今の時代、tiや他のメーカーのプロセッサは標準的にHDCDデコーダーを内蔵しています。内蔵していないと思うほうが、難しいものがありますね。

率直なところ、今のTacTの製品でHDCDをどのように処理しているのかは、わからない・・・というのが本心です。なにしろ、処理していても、「え・・・」と思う場合があるので、聞いて判断してもどれだけ正しいかわからないですね。エンコードミスは、すぐにわかるのですが・・・。
TacTは、もともとToccata TechnologyのEquiBitテクノロジーの具体化のために作られたメーカーで、NAD傘下にありました。
その後、Toccata TechnologyはEquiBitテクノロジーとともにB&Wに買収され、さらにTEXAS INSTRUMENTSにB&Wが売却、様々なPWM LSIが開発されました。
こうした中で、TacTもNAD配下ではなくなりました。もっとも、製品にはつながりがあるので、リモコンは今でもNADのメーカーコードが使用されているようですけど。
このような中で、メーカーも技術者が入れ替わってしまっていると思います。
今はアメリカの企業ですが、もともとはヨーロッパのベンチャー企業です。
はじめに開発されたMilleniumは、ヨーロッパの香りのある、ハイエンドらしい製品ですが、M2150/S2150の内部構造は、同じ設計者が作っているとは理解できない内容です。ただ、技術の時代が違うので、性能的にはいい線いっていますけど・・・。
こんな背景があるのですが、製品だけはつながっています。
率直なところ、昔からの蓄積については、開発者であっても、よくわからないかもしれない気がします。なぜなら、新製品のスピードが未だに遅いからです。このような技術の継承の途絶は、欧米の企業で、開発者が入れ替わると、よくあることです。

製品は信じても、あんまりメーカーを信用していない私です

当初、Millenium Mark IIではHDCDの処理は、Equibitの直前で行われていましたが、後期の製品では、どうなのでしょうか。
ま、聴く限り、こんなもんだろうな・・・と思っている私です。マルチアンプ駆動の方がHDCDデコード処理よりも効きますから・・・。
暇が出来たら、HDCDが動作しているか測定器で見てみようと思います。

2003/09/28

05 DVD Audio と SACD について

新フォーマットあれこれ・・・
M2150/S2150は、192K 24Bitを取り扱うことが出来る機種です。
これは、DVD Audioの最大スペックに耐えられるものです。
ただ、この機能が発揮される日がいつのにるのか、ちっともわかりません・・・(^^;
この仕様の音楽信号をデジタルで出せる、DVD Audioの機器が存在しないのです・・・それどころか、今のままでもジッターが多すぎて、ジッター低減用装置まで必要な気配です・・・本当に今は21世紀なのでしょうか・・・(^^;

ジッターとはデジタル信号の揺らぎのことです。デジタル信号の揺らぎは、原理的に音質に影響が大きいのですが、ここで述べているのは音質どころか、安定して動作させることが難しいという意味です・・・

ここで、デジタルの新フォーマットについて説明したいと思います。
デジタル方式の媒体は、技術革新が早く、業界の本音としては、本当は10年くらいで新フォーマットに移行して欲しいみたいです。このような新しいフォーマットを提供するのは、ハードを販売する企業によっては大切な戦略で、繰り返しいろいろなことをしていました。しかし、市場が受け入れたものは、カセットテープの後は、CDとDVDくらいなものでした。MDは日本では受け入れられましたが、欧米では大変少なく、売っていても日本の倍の価格で販売されているほどです。
企業の戦略という観点ではなく、技術論としても、10年はひとつの周期の目安であるようです。DVDはCDの十数倍の容量を持っていますので、そうした新しい媒体を利用する技術が登場することは、自然でもあります。登場してから20年ほどたったCDの技術は、現代では簡単に取り扱うことが出来、容易に複製も出来ます。もはや、ハードルが低い媒体技術であり、技術の高度さそのものが複製防止に役立つ可能性はありません。音楽でCDの販売を基本とする人には、困った状況でもあります。

といいながらも、未だにCD再生は難しい技術の一つです。なにしろ、聴こえる音をしっかりさせるために、物凄くコストを必要とするからです。この分野で、日本のメーカーは海外のメーカーの後塵を拝しているというのが残念な今の現状です。仏作って魂入れず・・・ですかね。

また、映画のように5.1chの音楽信号が取り扱われたりする要望もあり、取り扱えるチャンネル数を増やしたいとか、著作権管理をしたいとかいった要望もありました。
オーディオ業界として、新フォーマットの普及は、新型機器の販売につながるので、かなり頑張るきっかけとなりました。もっとも、悲しい事実として、日本の企業の多くは、大量販売を目指していたため、長い期間、映像や音声の圧縮に研究が集中していました。そして、より良い音については、あんまり研究していなかったというのが事実でしょう。
ですから、映像の世界ほどの研究はされずに登場してきたのがオーディオの新フォーマットであるという感じがします。
そうして生まれてきたのが、DVDと同様な媒体を使用した、全く異なる2種類のフォーマット、DVD AudioとSACDです。この2種類の方式間で互換性はまったくありません。
ま、われわれユーザーからしたら、いい加減にしろよという気持ちがあります。
メーカーの立場では、研究してしまったので、製品化しただけのことだと思いますが・・・。
例によって、この状況は、PanasonicとSONY(+Phillips)の喧嘩になっているという、うがった見方も、出来ます。

浜崎あゆみ RAINBOW DVD-Audio版
avex AVAD-91200
avexはこれまでもDVD Audioのディスクを
何枚か出しています。

私個人としては、これらのフォーマットが十分に喧嘩を終えてから、優勢なフォーマットのものを採用しようかと思っていました。実は、どちらも気に入らなかったからなのでした。
しかし、CCCDの話題が出て、音が悪いとか、いろいろな人がなんとなく騒いだ結果、音楽提供側が新フォーマットの検討に入り始めています。著作権保護の機能が配慮されているからです。藪をつついて蛇を出したようなもので、とばっちりを受けた形ですが、仕方なく、そろそろ新フォーマットに対応しようかなーと考え始めました。なにしろ、浜崎あゆみまで、新フォーマットのアルバムが出てくるのですから・・・。
しかし、新フォーマットには一長一短があり、DVD AudioもSACDもこれだという感じが、私にはしません。こんな不完全なもの、使いこなすためには時間がかかりそうです。
この背景には、新フォーマットを考えている日本の技術者に、オーディオの深さを知っている人がいなくなったからだと思います。使えないんですよね・・・どちらの仕様でも、ハイエンドオーディオの世界では・・・(^^;
そんな背景があるのか、海外のオーディオ・メーカーは、一部の先進的なメーカーがいくつかの製品を出しているくらいで、多くは静観しながら対応しているという感じがします。
DVD AudioとSACDの違いは本質的な原理の違い
DVD AudioとSACDには、共通的なハードの制約、つまりディスクのデータ転送速度が10Mbps程度(9.6Mbps)という限界があります。この限界のため、これらの仕様の違いが生まれたといってもいいのかも知れません。
DVD AudioとSACDの本質的な違いは、音をデジタル化する原理の違いにあります。
DVD Audioは、今までのデジタル信号処理技術の延線にある技術で、一定の間隔でマルチビットにより音を取扱います。
SACDは、今までのデジタル信号技術とは異なる方式で、1ビットのデジタル信号の一定時間内の密度により音を取り扱います。つまり信号が大きくなるとビットの密度が増えます。
こうした背景があり、両方の方式でデジタル化されたものは、原理が異なるため完全な変換(可逆的な変換で情報を失わない変換)は出来ません・・・というか、出来ないと思います。
ただ、私の個人的な見解として、この違いよりも本質的な違いは、著作権保護技術にあるのではないかと思います。

06 DVD Audio

ちっともソフトが増えないね・・・(^^;
DVD Audioの規格は、DVD Forum working group WG4で作られ1999年3月に仕様がリリースされました。また、別な年に著作権保護の仕様を追加しています。あとで詳しくご説明しますが、こうした経緯のためか、ゲシュタルト崩壊した仕様になっています・・・(^^;DVD Audioプロモーション評議会が説明のためのホームページを用意しています。もっとも、そんなに活発なサイトではありません。アップデートも散漫です。これは、DVD Audioの現状でもあります。SACDに比べて、1/5くらいのタイトル数しかないからです。それで200タイトルもありません(2003/07現在)・・・SACDなんか、なんと1000タイトルもあります・・・あはは・・・比較すれば大きな比率の違いという印象がありますが、実際のところ、DVD AudioもSACDも、タイトル数の少なさは、今のところ議論する価値も無いという状況です。
■DVDにプラスアルファした仕様であるDVD Audio

DVD Audioは、今までのDVDの仕様を拡張したものに、CDよりも高品位な仕様を追加したものです。下表が示すように、ビデオゾーンとして定められている仕様は、全くDVDのままとなっています。

DVD Audio仕様
オーディオオブジェクトセット
ビデオタイトルセット(DVD仕様のまま)
符号化方式
LPCM(リニアPCM)
MLP(パックドPCM)
リニアPCM
AC-3
(Dolby Digital)
サンプリング周波数
48/96/192KHz
44.1/88.2/176.4KHz
48/96KHz
48KHz
量子化ビット数
16/20/24bit
16/20/24bit
...
最大転送レート
9.6Mbps(ハードウェア仕様)
6.144Mbps
0.448Mbps
チャンネル数
最大6ch
(48/96,44.1/88.2KHz)
最大2ch+6ch
(48KHz)
最大5.1ch
最大2ch
(192,176.4KHz)
最大4ch
(96KHz)
プレーヤーの条件
LPCM,MLPの再生が必須
NTSCビデオ再生機能付きプレーヤーの場合はAC-3の再生が必須。PALの場合はMPEG-2が必須
ディスクの仕様
LPCMかMLPの記録が必須
MPEG(NTSCの場合),AC-3(PALの場合)、DTSなどの記録が可能
DVD Audioに対応していない
ジブリ・トトロDVDプレイヤー
かわいいでしょ

DVD Audioのディスクは、DVD Audioプレイヤーでないと再生できない部分、オーディオオブジェクトセットと、通常のDVDプレーヤーで再生できるビデオタイトルセットから構成されています。先にご紹介した、浜崎あゆみDVD Audioアルバム RAINBOWは、1曲だけがオーディオゾーンであり、他の曲はすべてビデオタイトルセットにとなっています。
ですから、このアルバムの大部分は、DVDプレーヤーでそのまま再生できるはずです(ゴメンナサイ、試してはいません。わたしが持っている機器でDVD Audio未対応の機器は、飾りにしているジブリのトトロ・DVDプレーヤーだけだからです。)
通常のDVDとDVD Audioの信号取扱い技術の違いは、一言で述べるとDVD Audioには、MLP(MeridiAn Lossless Packing)という技術が用意されていることです。この背景には、DVDのデータ転送速度が高品位なデータに要求される速度に耐えられないことがあります。
■PCM方式とは
DVDで採用されているリニアPCM方式は、1秒間を特定の時間で区切り(サンプリング周波数で気切ります)、そのときの音の大きさを数値に置き換えて(量子化して)記録します。この数値を2進数であつかうので、16bit(65536段階)〜24bit(16777216段階)で表現します。
このため、サンプリング周波数と量子化ビット数でどのような仕様なのかを説明します。つまり、96k,24bitという感じにです。
■MLP / MeridiAn Lossless Packing
イギリスのMeridiAn Audio GroupとアメリカのDolby LaboratoryがDVD Forum working group WG4に提案し採用された、データを失うことが無いように作られたデータ圧縮方式が、MLPです。
DVD Audioの仕様では、6チャンネルの96K、24bitのオーディオ信号を取り扱うためには、13.82Mbpsの最大転送レートが必要です。しかし、DVDのハードウェアは9.6Mbpsの能力しかありません。この問題を解決するための仕様がMLPです。
MLPは、圧縮時に最大転送レートを超えないように取り扱うことが出来る、データを失うことが無い、可逆的な圧縮方式です。

■可逆的
圧縮してから、もとに戻したときに、全くデータを失わない時に、元に戻せるという意味で、可逆的といいます。元に戻せない方式は、不可逆的といいます。

MLPにより圧縮された結果が9.6Mbpsのデータ転送速度の範囲内で取り扱えるようになることにより、DVDのハードウェア仕様を超えている、6チャンネルの96Kbps、24bitのオーディオ信号を取り扱っても、MLPデコード処理というデータ処理によって13.82Mbpsの信号として取り扱うことが出来ます。
また、MLPを使用すると、データの圧縮がある程度出来ますので、収録時間を広げることも出来ます。ただ、MLPを使用すれば、DVD Audioの再生機能がないと、再生できません。ですから、浜崎あゆみDVD Audioアルバム RAINBOWは、1曲だけ、5.1ch 96Kの曲として収録されているGroup 3のRAINBOWだけ、MLPになっています。他の曲が、通常のDVDで再生できるようにするためです。
MLPのようなデータを失わない圧縮方式は、オーディオの世界では重要な仕様でもあります。音がデータの上では変わらないためのキーワードであるからです。
■リニアPCM・・・これまでの技術の発展形
リニアPCM/LPCMは、CDが作られた時代から今日まで発展を遂げている、音を取り扱うデジタル技術で主流を成している方式です。
この方式は、サンプリング周波数が高いほど、高い周波数を、そして量子化ビット数が多いほど、より正確に波形を表現できます。

SONY OXFORD DIGITAL CONSOLE
内部は32bitで処理しており、出力は24bitで出します。

DVD Audioでは、2chであれば192Kbps、24bitで音を取り扱うことが出来ます。この24bitという量子化ビット数はスタジオで利用されているプロ用のデジタル・コンソールの出力と同じです。
このようなデジタル信号の取扱い技術は、旧来からの延長線であり、現代の主流技術でもあります。
このようなデジタル信号取扱い技術のよい点は、普及していること、そして技術的な完成度が高いこと、この2点にあります。そして、普及しているため、コスト的にも比較的低くなっています。
欠点は・・・このデジタル信号取扱い技術の正当性を、特に研究しないで作られたという、根拠の無さかも知れませんね。当時としては先進的な仕様でしたが、先進的なだけで正当であることはそれほど検証されはしませんでした。ま、製品を作る側が作った仕様ですから、それほど暇であるはずは無いので、当然といえば当然ですけど。そのためでしょうか、CDの再生音が本当にしっかりしてきたのは、意外と最近です・・・CDの技術が次世代になろうという今頃に・・・(^^;
余談ですが、私が使用しているデジタル・オーディオ・システムを実現している技術Equibit PCM/PWM Power Processing技術は、このようなマルチビット型PCM技術のために開発された技術です。
■すべてを破綻させた稚拙な著作権管理技術
ここまで述べてきた話題では、DVD Audioとはそんなに悪くない仕様という印象があります。しかし、いろいろな企業が集まって作った、玉虫色仕様であるDVD Audioは、肝心の著作権管理技術において、信じられない仕様が導入されています。
MLPのような、可逆的圧縮技術を採用するほどに信号の忠実度を配慮していたDVD Audioは、著作権管理技術に原信号を不可逆的に壊す方法を採用したのでした・・・あはは・・・こうした状況が生まれる背景は、DVD Forum working groupという組織そのものがもつ、病根があったのかもしれません。人が集まったとき、智恵が集まり最高の結果が得られる・・・というのはなかなか誤解で、平均的か、最低レベルに合わせた仕事しか出来ない場合があります。著作権管理を検討した人たちは、オーディオの価値も意味もわからない人たちが多かったのでしょう。まあ、それは、きっと音楽関係者でしょう・・・(^^;
DVD Audioに採用された著作権管理技術とは、以下の2種類です。

ウォーターマーク信号
音楽に、人が気づかない音で管理信号/ウォーターマーク/電子透かしを混入します。この音は、アナログにダビングしても残りますので、DVD Audioからダビングしたものはすべてわかります。
でも、こんなことやるなら、無理してMLPなんか作る必要なかったでしょ・・・(^^;
CPPM
Content Protection for Prerecorded Media
メディアとプレーヤーの暗号化キーにより、暗号化された信号の解析を阻む技術です。このキーが不正規に利用されても、変更することが可能になっており、被害を最小限にとどめることが出来ます。

ウォーターマーク信号もCPPMもどのように利用するかは、ソフト制作者の判断次第・・・つまり、この場合は、必ず利用されるものであると考えた方がいいでしょうね・・・(^^;

どこの世の中に、著作権保護信号をオフにする音楽関係者がいるでしょうか・・・。まして、方式設計側は「音には影響しない」としたら、かならずすべての機能をオンにしてしまいます。

CPPMはともかくとして、ウォーターマークなんか使うなら、MLPなんて可逆的な圧縮方式を採用する必要は無かったのです。もっと効率的な、非可逆的圧縮にしたほうが、コストも安いでしょうし、効率も良くなります。無駄な仕様を加えることで、DVD AudioのプレイヤーはMLPという無駄な機能を内蔵しているに過ぎなくなってしまいました。
こんな時の方式開発者というものは、自分だけは正しいと主張できるよう努力するものです。ですから、問題があれば方式の運用の問題であり、方式そのものは完璧・・・という言いわけができるように仕様を作ります。でも、そんなの、何の意味もありません。実際に作られるDVD Audioディスクやプレイヤーが問題なのですから・・・。
笑い話ですが、日本での資料を見ると私が符号化方式と説明している用語について「マンダトリ符号化方式」という語で説明してます。MANDAtori/マンダトリとは、英語で強制とか必須という意味です。仕様について決まっているので従えというときに、MANDAtori Formatなんていいます。つまり、これは勝手にしちゃだめ・・・ということです。日本人の考えですと、方式というのはそう幅があるべきではないのですが、DVD Audioはそうでもありません。
そして、この出来の悪い著作権管理方式がもたらす問題は、方式が悪いのではなく、音楽アルバム製造者が悪い・・・ということなんですね。
私は個人的に、こうした方式のデザイン方針が嫌いです。MANDAtori honest in Music / 音楽に誠実なことが必須・・・それがオーディオの基本だからです。DVD Audioが質を達成できないならば、新フォーマットは価値が無いのですから・・・。
ウォーターマークではなく、フォーマット情報にすべての著作権管理情報を組み込んで、初めて音楽のためのフォーマットと言えるでしょう。それはSACDでは達成されています。
■「現実はもっと悲惨だ」・・・DVD Audioプレイヤー

2004年中期に、デジタルによるフルレートの伝送仕様が決まりました。これにより、フルレートで接続する技術が確立し、それ以降でフルレートによる接続は、技術的に出来ます。ただ、この仕様、どうかなー・・・各社が対応製品を出してくれるといいんですけどねー

2005/01/01

ある映画のシーンからとった言葉ですが、DVD Audioプレイヤーの現実は、その方式のゲシュタルト崩壊ぶりよりも、もっと悲惨です。

Panasonic DVD-S75
アメリカで好評を得たDVDの国内モデル
3万円でおつりが来ますけど、
映像の性能はちょっと前の最高級機種を凌ぎます
私のベッドサイドのAVシステムに使用しています
多くのDVD Audioプレイヤーは、通常のDVDとの共用型が多く、数多く生産するために腐心しています。ですから、今年に入ってから、DVD Audioをサポートするプレイヤーの低価格化は、急激に進んでいます。2〜3万円のDVDプレイヤーがDVD Audioをサポートしているからです。

ただ、これはなんのためなのでしょうか・・・CDプレイヤーと同じ価格で、映画が見れて、より進んだ仕様が使える・・・すべてが素晴らしい気がしますが、実は偽りがあります。現代の技術で、本当に質が高いものを作るには、やはりコストがかかるのです。
私が中学生の頃、ラジカセが開発されました。受験勉強をしながらラジカセを聴く・・・それは、当時の中学生にとって、ちょっとしたお洒落でした。もっとも、私の家庭では、ラジカセを買うだけの余力がなかったので縁が無い夢世界でしたけど・・・。そんなラジカセは、ラウドネス回路などたいそうな名前のついた機能が満載されていました。もっとも、実態は抵抗1個、コンデンサー1個の回路程度のものです。それに、たいそうな名前をつけて、カタログに偉そうに記載していたのでした。今考えると、子供のお金を巻き上げるという点では、今の音楽ビジネスとそう変わりませんが、硬いビジネスの大企業がしているということからすると、今よりもひどい状況でした。
そして、今のDVD Audioの状況には、似たものを感じます。
この状況は、DVD Audioの仕様に記されていない、実際の製品において実装されている仕様の制約に、如実に現れています。
DVD AudioやCDのようなデジタル媒体を取り扱うオーディオ機器は、音質をより高めるために、外部の機器を利用できるよう、デジタル出力端子を備えています。当然、DVD Audioに対応したプレイヤーは、すべてそうした出力端子を備えています。
でも、この端子、本質的にはなんの意味も無いんです・・・著作権保護信号が入っていると、デジタル出力端子は自動的にCD並みというか、cd未満の水準の仕様にダウンコンバートを行うからです。つまり、高品位なデジタル信号を出力できないのです。結局のところ、MDへのコピー用出力というのが、DVD Audio機器のデジタル出力の実態です。
私が使用している2機種の実際の仕様は以下のようになっています。

東芝 SD-9500
Panasonic DVD-S75
著作権保護ディスク
88.2KHz以上の信号は1/2のサンプリングに自動的にダウンコンバートしたがって、44.1KHz〜96KHzの出力になります。量子化ビット数は、自動的に16bitに変換 88.2KHzの信号は、44.1KHzか48KHzのサンプリング周波数にダウンコンバートし、量子化ビット数は自動的に16bitに変換
著作権非保護ディスク
96KHzまではそのまま出力、176.8KHz以上は1/2に自動的に変換。
量子化ビット数はそのまま出力
そのまま出力

現実には、著作権保護信号を組み込まない信号なんて、ありえないので、著作権非保護ディスクの仕様なんて、使われることはありえないでしょう。仕様制作者が、自分達は悪くないといういいわけのために作ったような、無意味な仕様です。
また、このようにサンプリング周波数を下げる処理は、本質的に難しい処理でもあります。
記録されているデジタル信号のサンプリング周波数を下げるということは、技術的にはデシメーションと呼ばれ、音の質を決めるとても大切な技術です。デシメーション・フィルタといわれる回路が必要で、元の信号に含まれている高い音を除去しないといけません。そのため音に大きく影響が出ます。スタジオでのこの処理も、音に配慮することが大変なのに、ラジカセの値段で作られている機器が、ちゃんとした処理が出来るわけもありません。このデシタル出力の音は、結局のところCDに遠く及ばないものとなっています。なんのためのデジタル出力なのか・・・(^^;

デシメーションについては、こちらをご覧ください

実際のところ、どのようなフォーマットでデジタル出力するか仕様が定義されていません。だからこうした仕様で作られている・・・とメーカーは言いそうですが、そうは理解しがたい点があります。なんか、本当はいろいろな背景があるのでしょう。つまり、ソフト製作会社に対して、「これだけコピー対策をしてます」ということです。しかし、こんなことしてて、「CDに対して1000倍の情報量」を誇るDVD Audioの音が、たいしてCDと変わらなくなってしまえば(良いアナログ回路というのはお金がかかります、低価格のDVD Audio機器の再生音、CDよりも1000倍も良くできないでしょ・・・率直なところ、そう変わらないですよ)、DVD Audioの存在意義が、なくなってしまいます。
また、DVD AudioをサポートするDVDとの共用機のデジタル出力は、ガラクタに近く、ジッター(デジタル信号の揺らぎ)が、比較的多い傾向があるようです。ジッターは音質に与える影響が激しく、オーディオの世界では、許されない問題です。現実には、DVD Audioのプレイヤーでハイエンドに耐えられるデジタル出力をもつ機種は、世界でも数機種に限られるのかも知れません。
ま、今年ぐらいから、CDとDVD Audioの2層ディスクが開発されるようになりそうなので、いい音はCDから出すことが出来るかも・・・あはは・・・(^^;
さて、DVD Audioって、何のための仕様なのでしょうか・・・よりいい音楽を届けるため・・・というよりも、DVD Audio機器を売るため・・・というくらいに理解した方がいい気がしてしまいます。

「現実はもっと悲惨だ・・・」

これって、私の本心です。

07 SACD

■目白押しの新ソフト発売・・・と言ってもね・・・(^^;
この文章を書いている時点、2003年の中旬では、新フォーマットによるソフトの多くは、SACDにより発売されています。ですから、SACD優勢・・・なんて話題をする人がいますが、ちょっと待ってください・・・それでも1000タイトル程度なんです。
しかも、発売されているSACDの多くが、初めからSACDの方式であるDSD(説明は後述)により音楽を収録したものではなく、マルチビットPCMで作られたものをDSDに変換したものです。つまり、SACDにした意味が、よくわからないものが多いという、ちょっとお寒い状況があります(ここで述べた意味は、後述する内容でご理解戴けると思います)。
つまり、SACDもDVD Audioも、新フォーマットとして普及期に入ったわけではないということです。
■DSD / Direct Stream Digital
DVD Audioの仕様が定められていく中で、例によってというか、やっぱりというか、SONYとPhiliipsが途中で決別して、別に打ち出した仕様がSACD / Super Audio Compact Discです。SONYは、議論が進む中で、自社仕様の製品をぽんと出荷するのには、業界で定評があります。ま、私達一般ユーザーもそうした会社だと思いお付き合いしているわけですが、出てくるものには、それなりに理由がありますので、納得するものも少なくありません。業界人とっては、癪に障るその行動は、私達ユーザーには、別に困ることではないですから・・・(^^)v
SACDはDVDと異なり、映像を取り扱う仕様は静止画程度であり、音のために作られた仕様となっています。これは、オーディオとしては当然な感覚です。だいたいからして、映像回路がオーディオ回路と同居すると、大変なんですよね、いい音のする機械を作ることは・・・。
SACDとDVD Audioで最も異なる点は、音をデジタル信号にする原理そのものにあります。

SACD仕様
符号化方式
DSD / Direct Stream Digital
サンプリング周波数
原理が異なるためサンプリング周波数や量子化ビット数という概念の意味がPCMと全く異なります。時系列的なビットの意味が異なるからです。SONYからは意図的に比較する資料が出ていますが、どうでしょうか・・・これを意図的に比較資料にするのは、誤りだと思います。で、下の単位を勝手に作りました。この単位で行くと、PCMの96Kbps24bitよりちょっと上という情報量ですかね。また、DVD AudioのMLPに相当する可逆的データ圧縮方式も用意されているそうです。
量子化ビット数
単位時間内情報量
2.8224Mbit/sec
最大転送レート
9.8Mbpsくらいかな・・・
チャンネル数
2ch〜5.1(6)ch
プレーヤーの条件
SACD専用PSP-PDM対応再生ドライブ
ディスクの仕様
PSP-PDMに基づく暗号化が必ず行われています

DSDのイメージ図
この方式、DSD(Direct Stream Digital)が、マルチビットPCM方式との大きな違いになります。ビット列の密度により音を表現します。

右の図のような、信号が大きいところで、ビット列の密度が高くなります。
SACDのサンプリング周波数とは、このときの最も短いビット列のときの周波数の定義であり、2.8224MHzとなっています。ですから、マルチビットでのサンプリング周波数と1ビットの当たりの情報の意味が全く異なり、同一の用語になっていても、比較は出来ません。
実のところ、マルチビットPCMとDSDの方式的な音の違いがどの程度のものかも、今のところ、わかっていません。そのため、どちらかが圧倒的に進んでいるということは出来ませんし、比較も困難です。原理が異なるとは、そうしたことであるわけです。
ですから、将来において、よく開発された両方式のプレーヤーの質の違いから違いを判断できる日があるといいですね・・・そんな日があるかは知りませんが・・・(^^;
■DST / Direct Stream Transfer
SACDにも、DVD AudioのMLPに相当する、情報を失わない可逆的データ圧縮方式、DST / Direct Stream Transferが用意されています。
この方式は、MLPと同様にマルチチャンネルの際に利用されることで、ディスク媒体の仕様の限界を超えることが可能になっています。また、この方式を利用することで、収録時間を延ばすことも可能となっています。ま、可逆的に圧縮する技術ぐらい、今のようにデジタル処理技術が進歩していれば、当たり前かも・・・。
■本当の違いは著作権保護方式の考え方
DSD方式が採用されているため、この互換性の全く無い音を取り扱う技術の違いが、DVD AudioとSACDの違いの核であると思われています。
しかし、すでに述べたように、方式の違いに優劣があると述べることは、困難です。
実は、最大の違いは、著作権保護についての考え方の違いではないかと思います。
これは私個人の見解ですが(もともとは親友の見解でした)、他の友人達も同じ見解の人が多いように思います。

SONY CXD2751 DSD Decoder

SACDプレーヤーには、SONYのDSDデコーダーLSIが入っています。このデコーダーLSIから、左右のDSD信号が出力され、それをDSD方式のADコンバーターにより、アナログ方式に変換します。ですから、DSDデコーダーLSIは、必須なものです。そして、このLSIに著作権保護技術が集約しています。
SACDでは、DSD方式による音楽信号は、暗号化されており、どのようなデコード処理を行ったらいいかの指示を、音の信号には関係ないRF信号帯に記録されているインビジブル・ウォーターマーク信号により与えます。
このLSIは、インビジブル・ウォーターマーク信号を検出し、それに対応する暗号解読処理を行うものなのです。
この暗号化方式の詳細は未公開で、将来においても公開される予定はありません。この暗号を解き、元の信号を得る処理には、このデコーダーLSIが必須です。つまり、このLSIをSONYから購入しない限り製品を作れなくすることで、管理を可能としています。
これが、SACDの著作権保護方式のキーポイントです。
このように、SACDでは、音楽信号を汚すことの無い方法で、著作権管理を可能としています。これが本当のSACD最大の特徴であるといえるでしょう。
■SACDの問題は、音楽制作現場にある・・・ここにもゲシュタルト崩壊が・・・
音楽信号を汚すことが無い、SACDの著作権管理技術は、より素晴らしい音を求めるオーディオファンには、望ましいものです。ですから、手放しに喜びたいのですが、問題があるんです・・・それは、DSD方式が、後から出てきた技術であり、音楽制作現場がまったく対応できていないということです。
なにしろ、DSDによるデジタル・ミキシング技術も、つい数年前に確立した程度で、DSDを基本とすると、どうやって音楽を制作したらいいのやら、ちっともわからないのです。こうした状況であるため、現代の音楽シーンで多用されている、電子楽器では、DSDとして直接に信号を出せるものはほとんどなく(ひょっとするとまったく無い)、一旦アナログ信号にして合成せざる得ません。なんのためのデジタル処理であるのか・・・。
SONYはプロ用の設備でも一定の地位を築いていると思います。
そうした企業ですから、DSDが普及することで、新しい市場開拓が出来るわけで、そうしたい理由はわかります。しかし、音楽を販売する側にとって、コスト増には耐えられないであろう状況が現代にはあります。

アメリカではユニバーサルなど大手でもCD価格の値下げが始まっています。他のメーカーも追随しそうな気配です。
まあ、DVDとCDが同じ値段というのは、ユーザーからしたら納得いかないでしょうから、当然かなー
アルバム制作費という名のマーケティング費用が大きすぎることを、見直せるほど業界が成熟できれば、そうした状況にも対応できると思いますけどねー・・・音楽業界は、これから大規模な構造変動が避けられないでしょうね。

すでに述べたように、最近に発売されているアルバムは、DSDで収録されたものではないものが増えつつあります。しかし、原理がまったく異なる方式間の変換の正当性は本質的な疑問であり、方式の意味性そのものの問題でもあります。
つまり、SACDも、音楽製作全体で見ると、ゲシュタルト崩壊しているという現状があるのでした。将来に、製作現場がすべてDSDになれば別ですが・・・そんな日なんて、あるのでしょうか・・・私には、とてもそう思えません。すでに述べたように、DSD対PCMがアナログ対デジタルほどの違いがないからです。
■DSDのデザインは、昔の世界観に囚われている

SONY QUALIA 007 / Q007-SCD

デジタルパワーアンプとトランスポートを統合した製品です。今のデジタル・オーディオ・システムを理屈だけ考えて行き着くと、このデザインしかないんですが、あまり欲しくないデザインですね。私には、一体型で終わってしまっているという点で、ラジカセの究極型にしか見えません。当然ですが、バイ・アンプも出来ません・・・(^^;・・・再生という深さがもつオーディオの本質を知らないと、これを作るんでしょうか・・・。もっともDSDという方式には、こういう機械しか思いつけない底の浅さがあります。このデザインになると、再生側がどうしたら音を制御できるのかわかりません・・・B&OやMeridiAnと比較するとトータルの思想が足りなすぎます。QUALIAのシリーズに入れていいですかねー。まあ、音を聴いたことがないので、気楽に書いてますけど・・・。SACDが主流になる日があったら、聴いてみようかな・・・。
と思っていたのですが、SACDが主流にならない段階で、聴いちゃいました。惜しい製品ですねー・・・スピーカーが悪いのか本体が悪いのか、わからないですけど・・・詳細は、こちらをご覧ください。

SACDのサイトを見てもらうとわかりますが、SACDの世界観は、生の音を録音してスピーカーから再生するという観点に立っています。デジタル・オーディオの原理は、日本発が多いのですが、この原理を考え出した早稲田の先生のオーディオ観が、そうした「生の音を録音して再生する」であったのでした。

論文を読むと、余計そう思います。

それは、別に問題ではないのですが、それだけでしか考えていないのであれば、問題です。
現代の音楽シーンでは、多くの処理はデジタルで行われており、異なるデジタル処理原理を投入すれば、混乱することは当然であるからです。PCMデジタルで直接出力する音源も数多くある現代に、無謀というか、音楽現場を無視しているというか、めちゃくちゃという感じがあります。

かつて、NHK技術研究所が、4:3の画面をハイビジョンでワイドサイズにすべきとしてから、日本ではワイド・テレビが作られました。その結果、10年間以上にわたって、日本の大型テレビはワイドテレビであるために、欧米で販売されているテレビの3倍の価格になってしまいました。今でも、ワイドテレビは日本の主流ではありません。ハイビジョンはともかく、BSデジタル放送の多くは、未だに4:3の画面の放送です。そうした放送を見る私達は、画面の1〜2/5が利用されない、ばかばかしい状態を我慢するか、映像制作者が意図していないほど横広に拡大した画面を、口を開けてみているしかないのです。
基本的な方式の変更の意味をNHK技術研究所の人間は、理解していなかったのでしょう。ひょっとすると、自宅では4:3の画面のテレビを利用しているのではないでしょうか・・・。

この話題をNHK技術研究所の人と話していて、喧嘩になったことがあります。
「ハイビジョンは、なんでワイドサイズの画面になったんです」
「その方がいいからです」
「・・・4:3の画面をワイドテレビにしたことに正統性がないじゃないか。映像文化に対して与えたダメージが大きすぎる」
「あなたは、NHK技研が出している画面サイズについての研究結果のレポートを読んでいないのか」
「あんなお手盛りレポートの正当性はどこにあるんだ。IMAXシアターに行ってみろ、4:3の画面サイズだろう。なぜそうしたサイズが選択されたんだ。画面サイズと迫力の相関関係がないからだ。プロジェクターの多くも4:3だろう。それに、ワイドサイズはスクリーンサイズとも違う。映像の基本であるアスペクト比が違うため、たいへんな現状があるじゃないか。テレビの売り場に行ってみろ、ワイド画面にあわせて4:3やスクリーンサイズを歪ませた画面でデモをしている。映像製作者の意図は、台無しじゃないか。それに、ワイドテレビはほとんど日本でしか売られなかった。そのため、日本のテレビ価格は長い間高騰し、消費者は無意味なコストを支払い続けた。日本に対してどれほどの損害を与えたと思っているんだ。」
「それはメーカーの問題であり、われわれの問題ではない」
「研究実態は、各メーカーと共同しているじゃないか。メーカーに対して指導的にある立場を意図的に無視するのは責任遺棄に過ぎない」
「・・・・ここではなんですから、場所を変えてお話しましょう」
「いいですよ」
でも、その場所にはNHKの苦情相談係りだけが来ていました。つまり、逃げられたのでした・・・(^^;
苦情相談係りからは、書面で出してくれといわれ、「いいですよ」と返事をして、私もNHK技研の人を見習って、ほったらかしにしました・・・(^^)v

SACDがDSDを採用したことが、これと同じ問題を残す可能性は高いと思います。
音楽の製作現場が、マイクによる録音だけではないことを忘れている方式制作者の姿を、連想してしまいます。そして、あまりにも、現実の世界を軽んじています。
音楽業界には、DSDに完全に対応したスタジオや電子音楽設備を完備させる力は、もう無いのではないかと、心配です。世界的に、音楽産業はその峠を越えているように思えるからです。デジタル化でさえ青息吐息で実現したのに、これからDSD化なんて、出来るのでしょうか。それにDVDはPCMです。ま、同じスタジオが両方を取り扱うことは多くはありませんが、音楽製作者にとっては大変で、二重にデジタル設備を用意するなんて、不合理すぎます。プロの制作スタジオが、アナログに戻ればまだ楽かもしれませんね・・・(^^;

08 どこに行くのか・・・デジタル・オーディオ・フォーマット

これまで、説明してきたように、新しいデジタル・オーディオ・フォーマットは、「これだぜ!!」という決め手を欠いています。
率直なところ、どうなるんだろうというのが本心で、あまりかかわりたくはありません。
私も、浜崎あゆみとか綾戸智絵などのアルバムがあるから購入はしていますが、積極的に聴きたいものではありません。ま、どちらのフォーマットも私の使用しているようなフル・デジタル・システムでは満足に再生できないのですから、余計にそう思うのでしょう。
しかし、これほどに互換性や質について配慮が足りない方式を次々と考え出す日本のオーディオ業界には、致命的に足りないものがあるのだと思います、
それは、音楽を文化的な資産と考えて、継続性を守る精神です。
方式設計者たちが、フォーマットの上方互換性や、いろいろな現実に対して、移行に敷居が低いように配慮すれば、出来たはずなのです。
結局、音楽を忘れたオーディオ業界の実態が、新フォーマットの背景には見え隠れしています。

ま、音楽業界も、おんなじかも知れませんけど・・・

そんな状況があっても、現実を遺棄することは出来ません。
私のところに来た、第三世代デジタル・オーディオ・システムは、根本的な混乱にある現在において、第三世代デジタル・オーディオ・システムの機器開発者達のぎりぎりの努力が届けられたものでした。これは、技術的な努力ではありません。中途半端な各方式の中で、折衷点を見出す努力です。開発者たちは大変だったと思います。

オーディオの趣味をしていして、つくづくと感じます
人が作り出すさまざまのものは、やはり人の考え方の反映すぎないと・・・

新しいデジタル・オーディオの世界において、音楽の質がその中心のひとつになる時代は、
いつ来るのでしょうか・・・
一抹の不安を覚えながら、しかし、音楽を楽しむ私です・・・


第16音楽よ、届け!



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